怒り声で作曲したら、音楽の起源を辿っていた話

声で音楽を作ろう

「人間を形成するために一番大切なものは何かわかるか?」

「音楽とのふれあい?」と僕は、自棄を起こしたように言う。

 

  −伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』

突然ですが、水琴窟というものはご存知でしょうか?

水のたまった水瓶に新たな水滴が落ちることによって、奇妙な音を生み出す装置です。

これを面白く思った有志によって「声の水琴窟」というメディアアートを作ろうと思い立ちました。

 

「声の水琴窟」に、声をかける。

「声の水琴窟」から、過去に蓄積した声から帰ってくる。

 蓄積した声たちは、まるで音楽のような心地良さを生む。

 

そんなことを期待し、開発に挑みました。

しかし、その壁は想像以上に高かったのです。

「声で音楽を作る」という、砂漠をひた歩く旅が始まったことに、その時はまだ気付いていませんでした。

作品1. 色んな声や音を繋げる

丸二日かけて製作したものはこちら。

どことなくデザイン「あ」っぽい。

素朴な旋律ができました。

使用技術はPython(PyAudio)です。僕は今回作曲にはほぼ関わらず、ひたすらコードを書いていました。 

研究発表

さてここからどうしよう。

せっかく作ったので、どこかに出展したい。

発表場所を探していると、ちょうどそのとき「IEEE TOWERS」という研究会が出身大学で行われる話を小耳に挟みました。

何かしら考察して新しいものを生み出してみよう、と軽い気持ちでサクッと参加することに。

 

しかし、アイデアは行き詰まりました。

どういった切り口なら研究の対象にできるか。

それを見つけることが出来ずにいたのです。

夜は更けゆき、次第に怒号が飛び交うように。

ディープラーニングでいい感じにすればいいだろ!」

「キミ江戸っ子のふりしてるけど本当は千葉生まれだよね」

「ロクに社会で揉まれてないからいつまでも顔が幼いんだよ」

 

ついに掴み合いになりかけたその瞬間、メンバーの一人がぼそっと口にしました。

 

「この罵声を音楽にしたら面白いんじゃないかな」

 

その瞬間、怒号がピタッと止みました。

それはまるで全員にとっての天啓のようでした。

 

「人の感情を込めた声で音楽を作ると、その印象を与える音楽を作れるのではないか」

 

すなわち「怒り声で音楽を作ろう」ということです。

こうして、怒りや喜びといった「感情音素」で作曲するという大航海が始まりました。

作品2. 怒りランダム(閲覧注意)

怒り声で音楽を作る。

その為には怒り声が必要だ。

最近怒ったこと。

郵○局に荷物を失くされたこと。

メ○カリで買った本にがっつり赤線が引かれていたこと。

そんな怒りたちを込めて一つ一つ音を録り、ミックスしました。

 

これが僕の初めて作った音楽です。

「作品1」は僕が作ったものではないので、これが僕の実質的なデビュー作です。

 

尾崎豊の15の夜、宇多田ヒカルのAutomatic、タランティーノのレザボアドッグス、俺のこれ。

 

それではどうぞ。

 

聞かされた周りの人たちの感想

「あ?」

デトロイトの生活音か何か?」

「というか音楽じゃねーだろ」

 

燦々たる評価を浴びました。

これは音楽ではない

しかしそこにはヒントもありました。

音楽ではない」。

これは、一つのキーワードかもしれません。

 

なぜ音楽性は無くなってしまったのか?

どうやったら音楽になるのか。

何が音楽を音楽たらしめてるのか。

 

それを考えることになりました。

もうしばらくお付き合いください。

作品3. 怒りリズム(閲覧注意)

「音楽って何?」

Wikipedia先生は、そんな質問にも答えを与えてくれます。

西洋音楽では、リズム(律動)、メロディー(旋律)、ハーモニー(和声)をもつものが音楽とされる。

音楽 - Wikipedia

リズム・メロディ・ハーモニー。

音楽性を回復するため、 まずはリズムを取り入れてみることに。

 

ではリズムとは?

Wikipediaが図解して説明してくれているのでここでは結論だけ。

 

リズムとは「等間隔で周期的に奏でられる強弱のある音の集まり」。

 

周期性。

周期性が必要なのです。

 

「作品2」は、周期性がありませんでした。

ランダムに打ち鳴らしているのみ。

リズムとは呼べないようです。

 

周期性を導入してやれば、旋律はリズムとなり、音楽となっていくのではないか。

そんなことを思いながら手持ち無沙汰で付けたラジオからこんな曲流れたりすんだ。

怒りのリズム

喜びのリズム

確かに、少し音楽に近づいた感じ・・・?

近付きましたよね?()

声はあみたろの声素材工房から拝借。

作品4. コードの概念を取り入れる

リズムに乗ることに成功(?)したので、続いてメロディやハーモニーへと歩みを進めます。

ではメロディやハーモニーとは何かを説明していきます。

メロディ

ある高さと長さを持ついくつかの楽音が前後に連続して、それがリズムに従って、連続的に進行する(演奏される)ことによって、何らかの音楽的内容をもつもの

メロディ - Wikipedia

メロディとは、高さの異なる音の繋がり。

それは直感に合っています。

しかし、ただ無茶苦茶にかき鳴らすだけではメロディになりません。

その辺りのことを知人の音大生に聞いてみたところ、「メロディには起承転結がある」と聞きました。

その辺り物語の構成と何も変わらないのだという。

Wikiepdiaに書かれている「音楽的内容」とは、言い換えれば起承転結のことを指しているのかも。

メロディとは、高さの異なる音の繋がりで、起承転結のああるもの、と解釈しました。

ハーモニー

和音の進行と各声部の配置や進行の組み合わせのこと。

(あるいは)俗に和音のこと。

ハーモニー - Wikipedia

ちょっと難しいですね。

メロディは「高さの異なる音の繋がり」ですが、では具体的にどんな音を当てはめていけばいいのか?

そのヒントを与えるのがハーモニーだという風に僕は解釈しています。

 

この辺りはある程度理論的に説明できます。

まず、音楽にはコード(和音)という概念があります。

コードとは、高さが異なる複数の音が同時にひびく音のことです。

で、このコードには一つ一つ、落ち着かせたり不安にさせたり盛り上げたりと役割があります(出典)。

 

その中に、明るい印象を与えるメジャーコードと、暗い印象を与えるマイナーコードというものがあります。

具体的には、「ド・ミ・ソ」はメジャーコードで、「ド・ ミ♭・ソ」はマイナーコードです。

これらはC(ド)を基音とするコードなので、Cメジャー、Cマイナーと呼びます。

Cメジャー

Cマイナー

聴き比べてみると印象が違うのが分かると思います。

西洋音楽(クラシック)は、こういったコードで感情を表現していたようです。

ちなみに、同時に奏でなくとも、ランダムにかき鳴らしても、そのコードを奏でていることに該当するらしいです。

音の高さを変えるのは「聞々ハヤえもん」というフリーソフトを使いました。

怒り・Cメジャー

怒り・Cマイナー

喜び・Cメジャー

 

喜び・Cマイナー

正直コードによる違いはあまり分かりませんでした。

原因は、 音程のチューンが足りないか、各音素の音程が一定じゃないからか、どっちかかなと思います。

「音痴なんていない」ってTEDで見たんだけどな。

で、実際の作曲は、これらコード同士を繋げて曲を作っていきます。

それがハーモニーと言うものです。

これもパターンがあり、例えば邦楽でよく使われる「王道進行」というものがあります。

作品5. 音楽の音符に声を乗せる

コードに声を当てはめて感情を増幅させるという試みは失敗に終わりました。

そもそもそんな回りくどいことをせずに、直接声を楽曲に組んでみればいいのではないか。

各声をこれらの曲の音符に当てはめて行けば、「怒りの歓喜の歌」「怒りのトッカータとフーガ」ができるのではないかと思いました。

怒りの歓喜の歌

怒りのトッカータとフーガ

怒りの歓喜の歌(キモい)

できなかった。

もはやなんだか分からなくなった。

というかキモい。

作品6. 二種類の感情

喜びと怒りの感情を混ぜて旋律を作ってみました。

怒りと喜び(1)

怒りと喜び(2)

漫画とかによく出てくる、多重人格者の人格同士が喧嘩を始めて主人公が置いてけぼりにされてる感じ?アレ。

感情の不協和音?

竹中直人の例のギャグ?

いろんな感情が入り混ざると真顔になる。

作品7. 原点回帰。リズムで音楽を作る

作品4~6は迷走の記録でした。

声を繋げてメロディを作るのは、なかなか難しいようでした。

madとかは、バックに音楽が流れているから成立するわけですね。

結局研究会での発表はリズムを刻むのみで行いました。

喜怒哀楽、4パターン用意しました。

作品8. まとめ・今後の課題

まとめ

音楽って人間の本能に密接に結びついているんだなーと思いました(そんな話だったっけ?) 

今後の課題

音階を使って感情を表すのは難しそうなので、今後音階を使わずに音楽性を高めていくかを追求していきたい。

起承転結を入れたり、メロディ・アレンジ・SE等追加してより音楽っぽくしていく。

実際に使用したポスター

「感情音素の旋律による音楽の再解釈」

ポスター発表、自分たちだけ私服でした。

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